看護師のための保健医療計画のミカタ No.25 「福島県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」
■作成日 2018/2/26 ■更新日 2018/5/9
元看護師のライター 紅花子です。
各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は福島県の看護師就業状況と看護師確保対策についてお伝えします。
福島県の看護職員数の動向
平成23年の東日本大震災・原子力災害によって甚大な被害を受け、復興へ向けて一歩一歩あゆみを進めている福島県。農産物の安全確保と魅力のアピールだけでなく、全国有数の医療機器生産県である特徴を生かし、医療関連産業やロボット関連産業など、新たな分野の振興にも力を入れています。
それまでゆるやかに減少しつつも200万人台を維持していた人口は、この震災を境に減少のペースに拍車がかかり、200万人を割り込みました。東日本大震災から 6年が経過しましたが、長期化する避難生活によるストレスや放射線の影響など、多くの県民が健康への不安を抱えながら生活しているのが現状です。
厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は24,115人(保健師879人、助産師436人、看護師14,306人、准看護師8,494人)でした。看護職員数は22年まで順調に増加していましたが、平成23年には東日本大震災と原発事故の影響で、相双医療圏を中心に多くの医療従事者が避難のため離職し、県内の医療従事者数は一時的に減少しました。
しかし平成26年には、就業看護職員数が24,248人(保健師946人、助産師466人、看護師15,431人、准看護師7.405人)まで回復。人口10万人当たりの就業者数では、看護師は797.5人となっています。とはいえ、今なお看護師数は不足している状況です。
福島県の看護師需要
福島県内で病院に勤務する看護師は72.7%で、全国の72.8%とほぼ同じ割合です。診療所に勤務する看護師の割合は全国では12.4%であるのに対し、11.1%とやや少なめ。また、訪問看護ステーション勤務は全国3.3%に対して2.8%と少なく、介護保険施設等は全国6.5%に対して8.2%と、やや多くなっています。
このことから、県全体で見ると在宅医療の基盤がまだ十分には整っておらず、高齢者の療養は、病院や介護保険師施設に頼っている状況にあると推測できます。
しかし、医療圏別で見ると、南会津医療圏は病床数が非常に少なく、療養病床に至ってはゼロ。深刻な病床不足に悩まされており、医療の偏在解消が喫緊のかつ重要な課題となっていることがわかります。
福島県は今後、医療偏在の解消と在宅医療の推進に取り組み、そのための人材確保が重要と考えています。
東日本震災では、県内の病院のうち8割が被災し、県内の医療提供体制は大きく変化しました。
原発事故による災害の影響で、警戒区域が設定されたことにより、多くの医療機関が休止となりました。
さらに、相双医療圏は南北に分断され、従来の医療連携が機能しなくなり、連携機能の見直しを迫られています。また、多くの看護職員が離職したため、看護職員の確保と看護力の向上も大きな課題と言えます。
県は、平成23年11月に福島県地域医療再生計画を策定し、県内全域の医療機関の災害復旧と医療従事者の流出防止・確保を支援しています。今後、警戒区域の見直しによって住民の帰還が始まる地域では、地域における医療ニーズが高まることが予想されます。特に、在宅医療の伸展、医療の高度化・専門化に対応できる看護職員の需要は大きいといえるでしょう。
こうした環境の中で、福島県は、保健・医療・福祉の復興を目指して、看護職員が生きがいをもって働き続けられるような方策の必要性を強調しています。
福島県の看護師確保に向けての取り組み
福島県は、看護師の量と質を確保するために、「人口10万人当たり看護師・准看護師数1,153.2人、認定看護師数207人(平成29年度)」という具体的な目標を掲げ、「福島県看護職員需給計画」で次のような施策を掲げています。
次代の看護を担う人材の育成
- 中学生・高校生への看護職のPR活動
- 教育体制の充実に向けて、看護教員や実習指導者の育成や教育環境の整備を支援
- 准看護師養成所から看護師養成所への移行や看護教育の高等教育化を支援
看護職員の県内への就業及び定着促進
- 在学中の就職情報の提供や就業相談
- 修学資金の貸与事業
- 新人ナースの県内就業・定着のための研修を充実
- 病院内保育所の運営を支援
- 多様な勤務形態の導入推進を支援
- 看護職員が働きやすい職場環境づくりの促進
- 研修会を開催するなど、離職した看護職の再就業を支援
看護職員の資質向上
- 認定看護師など専門性の高い看護師の養成
- 地域でのチーム医療で看護職の専門性を発揮できるよう継続的なキャリア形成
以上のような看護師のキャリアアップや離職防止、働きやすさの確保のほか、特定地域への就業を促進するために、
- 認定看護師等養成事業への補助金交付
- 技術指導型在籍出向支援事業補助金
- 浜通り看護職員確保支援事業
- 新人看護職員研修事業費補助金
- 看護関係施設整備費等補助事業補助金
などの支援事業も行っています。
また、福島県看護協会では、様々な研修事業や看護師の就職支援を行っているほか、福利厚生として東京ディズニーリゾートを割安で利用できるプランなども用意しています。
復興に向けて医療体制を整え、県民の健康管理に取り組む福島県。自分にできることで地域の復興を支えたい、何か役立ちたいという熱い想いを持つ方にとっては、非常にやりがいを感じられる県ではないでしょうか。福島県では、子育て世帯の移住を支援しており、居住者は子供の医療費が18歳になるまで無料、県外から移住する子育て世帯には、空き家のリフォーム費用を最大250万円まで補助するなど、Iターン、Uターン生活を支援するさまざまな施策が用意されています。
参考資料
第六次福島県医療計画
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/1113.pdf
平成22年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_toukeihyoitiran.pdf
平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/toukei.pdf
福島県ホームページ
http://www.pref.toyama.jp/
福島県看護協会ホームページ
http://www.fna.or.jp/
福島看護職ナビ
https://www.f-kango.net/